2025年2月22日 (土)

豆電球の明るさで探る「音波の定常波」

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 2つのスピーカーから同位相で音波を出して平面上で干渉させたとき どこで大きな音が聞こえるか,というのは高校物理の授業で必ずやる演示実験です。
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 上のような簡単な装置を使うと,音が大きなところで豆電球が明るく輝きますから なかなか愉快です。コンデンサマイクは,私たちの耳と同じで圧力変化(密度変化)の大きいところで大きな出力になるので耳の代わりに使えます。
上の写真の赤い線のところで音が大きくなるのですが,「あれ?この赤線は〈腹線〉じゃないの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
 簡単のためにスピーカーを向き合わせて同位相で鳴らした時の絵を描いてみました。
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  スピーカーを同位相で鳴らすというのは,スピーカーのコーン紙が同じタイミングで出たり引っ込んだりするということですから,左のスピーカーAがコーン紙の前にある空気を右に押した瞬間,右にあるスピーカーBは空気を左に押します。これは,空気の変位の仕方としては「逆位相である」と言うべきではないでしょうか。「向かい合わせたスピーカーを同位相で鳴らすと,逆位相の波を作ることになる」のです。

 したがって,スピーカーA,Bの中点Oでは変位の波は常に逆位相で出会うので変位波の節(密度波の腹)となって,大きな音が聞こえるのです。しかし,だからと言って点Pも変位波の節かというとそうでもありません。

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 スピーカーA,Bの垂直二等分線上の点Pでは,変位波の和はゼロにならないので,節ではありませんが音は大きく聞こえます。線分ABの垂直二等分線上で点Pよりもっとずーっと離れた点だと,2つの変位波の向きはほぼ一致するので,強め合って腹みたいになりますが,音は大きく聞こえます。つまり,音波が変位波だとすると,この垂直二等分線や,他の音波が強め合う双曲線は節線とも腹線とも言えないのです。
もう,音波を横波表示して変位波として扱うのはやめにしませんか? 音波はその物理的実態に合わせて〈密度波〉とか〈圧力波〉と呼ぶほうが良いと思います。話が長くなるので,詳細はこのPDF→音波は「縦波」じゃなくて「疎密波」と呼んだ方がいいのでは?を読んでみてください。

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2025年1月 5日 (日)

豆電球の明るさで共振周波数を探る

 30年くらい前からやってる演示実験ですが,豆電球の明るさでRLC回路の共振周波数を探ってみましょう。
今回は周波数を周波数カウンタで測って,ちゃんと理論値通りになっているかどうか確かめてみました。

 RLC直列回路の共振周波数

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 どこの学校にもある島津理化の電磁現象実験器セットに入っている500巻のコイル,10μFのコンデンサ2個,豆電球を使ってRLC直列回路を作ります。
 500巻コイルのインダクタンスLをLCRテスターで測ったら,11.49mHありました。250巻の端子にすると,3.68mHになりました。また,コンデンサは1個で10.61μF,2個並列にすると21.60μFでした。

 低周波発振器(200Hz~2000Hzくらい)の出力を10W程度のオーディオアンプで増幅し,スピーカー出力端子にこのRLC直列回路をつなぎます。豆電球を切らないように注意しつつ,発振器の周波数を変えながら豆電球が最も明るく輝く周波数(共振周波数)を探ります。この回路が共振したときインピーダンスが最小になり,電流が最大になる(電球が最も明るく輝く)からです。
低周波発振器の出力にスピーカーをつけておくと,周波数の高低が耳で聞いて分かるので,この実験の意味が分かりやすくなりますよ。

Image1_20241227134701で共振周波数の理論値を計算し,実測値と比較してみました。まずまずの結果が得られます。
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 LC並列回路の共振周波数

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 LC並列回路もやってみました。
この回路のコイルとコンデンサを流れる電流の位相は逆なので,共振したときには回路図の左上下の豆電球に流れる電流はゼロになり,豆電球が消えてしまいます。
 11.49mHのコイルと9.72μFのコンデンサだと共振周波数は476Hzになるはずですが,やってみると420Hzくらいで共振しました。少しズレが大きいなあ。どうしてですかねえ? またちょっと考えてみます(^^;)

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2024年10月25日 (金)

コロナ放電ガン

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 グリーンテクノというメーカーが帯電ガンという製品を販売しています。
この銃を撃つと,コロナ放電で離れたところにあるものを帯電させることができるようです。YouTubeで検索すると色々な動画が見つかって楽しいのですが,「使い切りカメラの基板とコッククロフト・ウォルトンの回路で安価に作れるんじゃないの?」と考えてやってみました。

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 まず,使い切りカメラの基板からAC650Vの出力を取り出せるようにします。この基板は20年以上前に近所のカメラ屋さんで大量にもらった「写ルンです」のものなので,最近の使い切りカメラの基板は少し構成が異なるかもしれません。でも,電源を3VにしたときにAC600~700V出力される箇所が必ずあると思うので探してみてください。くれぐれも感電しないように注意してくださいねw
 こういう基板が手に入らない場合は,電撃殺虫ラケットの中にも同じようなモジュールが入ってますから利用可能かもしれません。夏ならホームセンターで500円くらいで売ってるんですけどね。

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 この基板にコッククロフト・ウォルトンの回路(10段)をつないでやりました。まあ,控えめに言ってこれで10,000ボルトくらいにはなると思います。

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 完成した回路をダイソーで買った水鉄砲の中に組み込んでやりました。なかなかカッコイイでしょ?
どんなことができるのかは下の動画(3分36秒)でどうぞ↓

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2024年9月17日 (火)

箔検電器を作ってみた

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 箔検電器(leaf electroscope)を作ってみました。
箔(はく)じゃなくて,台所用アルミ箔を丸めて作った細い筒を使ってるから「検電器」か。まあ何でもいいけど。

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 幅20mm 長さ60mmくらいに切った台所用アルミ箔をΦ2.0の細いステンレス線に巻いて筒を作りました。少し唾をつけてやると ほどけてこなくなりますw
真ん中に小さい穴を空けて,回転軸となる細い針金を刺します。
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 薄いアルミ板で筒の回転軸を固定する枠を作りました。瞬間接着剤でくっつけてやれば大丈夫です。

 これをダイソーで買ったガラス瓶に,金属キャップ(上部金属板)・Φ3.0のビス・六角両メネジ等を使ってセットしたら完成です。
金属箔が開くオーソドックスなタイプの はく検電器も作ったことがあるのですが,今回作ったこのタイプの方が動きが良いような気がします。
↓ 動画をご覧ください。

 ところで,上の動画のなかでもやってますが,

負の帯電体を使って箔検電器全体を正に帯電させる

という操作は,高校物理の教科書にもよく載っています。
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 ↑ クリックすると拡大表示されるので,よく見てほしいのですが,

操作② 箔検電器の上部金属板を指で触れると箔が閉じる

ってのを みんなどのように理解しているのでしょう?
「箔のところにある電子が指を通って大地へ逃げるのだ」という説明をよく見かけるのですが,これはどう考えたってヘンじゃないですか? だって下部の箔の方へ逃げてきてる電子が,

『お,上の方に逃げ道ができたゾ。負の帯電体に近づくのは嫌だけど,我慢して上へ移動して大地の方へ逃げようぜ』

などと考えるのでしょうか。そりゃないでしょー。

僕は②で起こっていることを(1)~(3)に分けて,次のように説明しています。
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 指を通って大地に逃げるのは,箔のところにある電子ではなくて,上部金属板の中にある電子でしょう。その結果,一時(いっとき)上部金属板の正電荷は過剰(上の絵では+が8個)になります。でも,すぐに箔の電子が吸い上げられるので,上部金属板の正電荷は元に(+が4個)戻ります。実際には,上部金属板から電子が1個逃げるとすぐに下の電子が1個吸い上げられるってのが繰り返されるんだろうと思います。

これが正しい説明だと思うのですが,このように書いてある教科書は見たことがありません。ネット上を探し回ったらあるのかなあ?

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2024年7月21日 (日)

【DAISOで330円】ニュートンのゆりかご

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 ダイソーは毎年 夏休みシーズンに「自由研究」のネタになる商品を発売しますが,今年2024年の夏はニュートンのゆりかごがそのラインナップに入っていました。で,さっそく買ってきて作ってみたのでご紹介します。
 この「ニュートンのゆりかご」ってのは,高校物理の教材カタログには衝突球と表記されていることが多いのですが,運動量保存則と反発係数の学習をするときに必ず見せている装置です。
ただ,世間に流布している説明がきわめてイイカゲンで,「衝撃波が伝わる」だの「運動エネルギーの伝播」だのデタラメもいいところです。上のリンク先のWikipediaでさえ,酷い説明になってて呆れます。ちゃんとした説明が知りたければココが良いと思います。

 この装置を理解するためのポイントは「同じ質量の2物体が弾性衝突すると速度交換が起こる」ということで,これはもちろん運動量保存則と反発係数の式から導出できるので,高校物理では必須の演習問題となっています。下の動画の最後に,僕が授業でいつも出題している物理クイズがあるのですが,「衝撃波伝播説」の人々はこのクイズに正解できないはずですw 「ちゃんと物理を勉強しなきゃダメよ」ってことですね :D

 ただ,このダイソーのキットはたいへん良くできていますが,製作手順3の

糸を固定パーツに通し,ボールの穴に通します。ボール上部を
セロテープどめしてください。

というところはイマイチかなあ。セロテープどめしないで糸が動くようにしておいた方がボールの位置を微調整しやすくて良いと思いますよ。
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 では,6分21秒の動画をご覧になって,クイズの答えを考えてみてください。

2個のボールを衝突させると,反対側の2個のボールが飛び出す理由は以下の通りです。
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 ボール1,2が速度Vでやってきて,2と3が衝突すると速度交換が起こって2が止まり,3が速度Vになります。次に3と4,1が2が衝突してそれぞれ速度交換が起こりますから,4と2が速度Vになります。次に4と5,2と3が衝突して速度交換が起こり,5と3が速度Vになります。最後に3と4が衝突して速度交換が起こるので,最終的に4と5が速度Vとなって飛び出していくのです。この6回の衝突があっという間に起こっているのです。

 動画内のクイズのようにボール1と2を一体化させて質量2mの物体にした場合は,ボール1+2の2mと,ボール3のmの衝突ですから,速度交換は起こらず,衝突直後ボール1+2は左向きV/3の速度を持ちますから(計算してみてください),ボール4と速度交換して静止したボール3と再び衝突し,それ以降は要するにぐちゃぐちゃになります。

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2024年7月10日 (水)

ハンディ・バンデグラフ起電機

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 以前,「自作バンデグラフ起電機」という記事を書きましたが,手で持って遊べる小型のバンデグラフ起電機を作ったので ご紹介します。
モーターはDC3V用の RE-280 で乾電池2本で動かすことにします。ローラーはアルミパイプとテフロンテープを巻いた塩ビパイプで,ベルトは折径180mm,幅6mmのゴムバンド(オーバンドGP-410)を使いました。
アルミパイプの方がプラス,塩ビパイプの方がマイナスに帯電します。これを塩ビパイプVP-20の中に仕込むことにします。
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 アルミパイプは両端を削って俵型にしておくとゴムベルトが外れないので具合がいいです。これはさらにアルミテープを巻いて中央を盛り上げてますが,ここまでしなくでも大丈夫です。ただし,アルミパイプの表面が梨地になってたら目の細かいサンドペーパーやピカール磨いてピカピカにしておきましょう。

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 もうひとつのローラーは直径8mmの細い塩ビパイプにテフロンテープを巻いてゴムバンドを掛けます。僕はテフロンテープの上にさらに百均で買ったジェルネイルのトップコート(ニトロセルロース)を塗りましたが,そこまでしなくてもよいかもしれません。
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 集電子は薄いアルミ板を切って作りました。やすりをかけてカッターナイフの刃のように尖らせておきました。

 ローラーを上下逆にしてやると,正負の極性も逆になるので,2種類のバンデグラフ起電機を作っておくと良いでしょう。
では動画をどうぞ↓

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2024年4月 2日 (火)

自作バンデグラフ起電機

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 今月から自宅警備会社SEとして勤務しているのですが,相変わらず高校物理関係の工作をしています。
数か月前から少しずつ作っていたバンデグラフ起電機(ヴァンデグラフ起電機)がとりあえず完成したのでご紹介します。
 上部ローラーはアルミパイプ,下部ローラーはテフロンテープを巻いたサインペンの軸を使っています。ベルトはホームセンターで買った太い輪ゴムです。
 はじめは「正に帯電しやすいアクリルパイプと負に帯電しやすいテフロンがいいかな」と思って作ったのですが,アクリルパイプよりアルミニウムパイプの方が強く帯電する感じです。帯電列を見るとアクリルとアルミニウムの位置は近いところにあります。
構造の模式図はこんな具合 ↓
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 剥離で生じた静電気をゴムベルトで運び,上下の集電子でそれぞれ拾い集めます。集電子はベルトに接触しない方が良い感じです。

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 モーターはパーツ箱にあったものです。6Vかけて回してますが,たぶん12Vまで大丈夫なモーターだったと思います。
集電子で集めた負電荷は装置を乗せてあるアルミ板に送り,さらにこのアルミ板に床に広げた3メートルほどのビニール線をつないでます。これがカウンターポイズ(仮想接地)となって,発電性能がアップします。

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 それほど高速回転するわけではありませんが,とりあえずボールベアリングも使っています。

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 集電子で集めた正電荷はアルミ線を通して上にかぶせるアルミ缶や2個のボウルで作った中空金属球に送ります。透明円筒は百均セリアで買った500mLプラボトルです。

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 モーターを回すと,写真のように3cm程度の距離で放電します。3万ボルトくらいの電圧が出ているということでしょうか。負に帯電している金属球はコレです。では,動画でどうぞ ↓

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2023年11月28日 (火)

ドライアイス不要の霧箱 (4)

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 ダイソーで売ってる保冷剤(税込110円)を使って霧箱を作ってみました。
東京学芸大の窪田美紀先生・鎌田正裕先生がご考案になったもののようですが,参考にしたのはこのPDF
今まで作ってきた「ドライアイス不要の霧箱」のうちで最も安価なものです。これはオススメ。
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 アルミ板は片面を黒く塗装し,大型のダブルクリップを使って保冷材に固定します。これを冷凍庫に入れて,しっかり凍らせます。うちの冷蔵庫はPanasonicの普通のものですが,冷凍庫は-18℃まで冷やせます。
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 ダイソーのコレクションケースで作ったチャンバの内側にフェルト布を貼って,エタノールで濡らします。
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 凍らせた保冷剤上のアルミ板に線源を乗せてチャンバをかぶせ,チャンバの上面をお湯で温めて2~3分待ちます。チャンバ内のエタノール気体が過飽和状態になると,放射線の飛跡が見えるようになります。

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ドライアイス不要の霧箱(2)
ドライアイス不要の霧箱(3)

 

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2023年10月26日 (木)

レンツの法則のデモンストレーション

 ぼんやりAliexpressを見てたら,こんなものを発見しました。
「Lentzの爪のデモ」なんて わけの分からないことが書いてありますが,どういうことなんでしょうなw
law → claw → 爪 という順序で間違って翻訳されたような気がしますが,まあそんなことはどうでもよろしい。
これはレンツの法則のデモンストレーションとしてシンプルですぐれた教材ですよね。Aliexpressで買うと高いので,うちにある材料で作ってみました。

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ホームセンターで売ってる幅10mmのアルミ平棒を曲げて,こんな具合にでっちあげました。真ん中の軸受けは,アルミ製の鉛筆キャップで作ってあります。

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一方はちゃんと輪にして,

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もう一方は輪の一部が切れています。ねじ類は磁石にくっつかないように真鍮製を選びました。

ネオジム磁石のような強力な磁石を近づけてやると,ちゃんと輪になってる方は外から入ってくる磁場の変化を妨げる向きに誘導電流が流れて動きますが,輪が切れてる方は反応しません。カンタンな構造だけど,こういうのが高校物理の授業に必要なんですよね。

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2023年8月18日 (金)

100均のセリアで売ってる テンセグリティ を作ってみた

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  facebookの情報で,「100円ショップのセリアテンセグリティの組み立てキットが売ってるゾ」という情報を目にしたので,さっそく手に入れて作ってみました。
 薄くて軽い合板とタコ糸のセットですが,ハサミさえあれば作れるのが素晴らしいですね。
半年くらい前にこのブログで「反重力? テンセグリティ」という記事を書いたときに大小さまざまなサイズのものを作ってみましたが,この工作は糸の長さの調節がキモです。初めて作る人は(普通は初めてか笑),ちょっと苦労するかもしれません。
 あと,テンセグリティ工作のベテラン(笑)から言わせてもらうと,2つのパーツをつなぐ真ん中のヒモは組み立て説明書にあるように最初に結ぶんじゃなくて,一番最後にしたほうが良いと思います。

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こんな具合に完成しました。タコ糸はもう少し細い方が見た目が良いかも。

 

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