教育観が貧しすぎるぞ
「希望格差社会」(山田昌弘 著)を読みました。「この程度のことなら,普通の教員は誰でも気がついてるぜ」ってのが正直な感想です。
でも,この本が売れるのは悪いことではありません。ぜひ手にとって,ミもフタもないこの現実を知るべきです。
ただ,教育について書かれた部分でちょっとひっかかることがあったのでコメントしておきます。
教育は,子ども(とその親)にとっては,何より「階層上昇(もしくは維持)の手段」であり,社会にとっては「職業配分の道具」なのである。 (中略) この教育を受ける側の欲求や,社会全体の要請を無視したまま,「教育は全人格の発達である」,「一生涯学ぶことはすばらしい」といった耳ざわりのいいことばだけが唱えられることが,日本の教育問題に関する議論をややこしくしている。「教育を受ける側の欲求や,社会全体の要請」を無視するわけにはいかないから,僕たちは実際に「生徒達をその能力に応じた進路に振り分ける」という仕事をしています。 しかし同時に,山田氏の言う社会の「リスク化」や「二極化」にとっくの昔に気がついている僕たちは,そういう世の中だからこそ,(山田氏の言を借りれば)「人格の完成とか,学ぶこと自体が楽しいとか,文化の伝達など」が教育の重要な目的として再浮上してくるべきだと考えています。 これが抜け落ちたら,僕たちはこの階層化社会における単なる「手配師」に過ぎないじゃないですか。 山田氏の
知識などは,公的学校以外の場でいくらでも学べるし,学校の中で知識を教えなくても,学校教育システムは機能するのだなどというセリフにいたっては「あんた,ほんとに大学人か?」と言いたくなりますね。 この人こそ「つめ込み教育」の被害者なのかもしれないけど,教育観が貧しすぎますね。「教えることの復権」(大村はま・苅谷剛彦・苅谷夏子)を読んでみるといいと思うぞ。
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