最近取りざたされているこの問題の出発点は三浦朱門の中教審にあります。教育関係者には常識なんですが,みんな知らないんでしょうか。ちょっと驚き。
もう少しちゃんと知りたい方はこちらをどうぞ。
■三浦朱門の思うツボ
戦後の欠落感を国民的に共有できた「幸福な」時代の子どもは大人が黙っていても熱心に勉強しました。知識や技術を身につけることが未来を約束してくれたからです。
ところが,その欠落を解消し「中流気分」に浸っている間に社会は行きづまり,今日のような「先行き不透明な時代」に突入したのです。
企業社会で頑張ってきたお父さんが突然リストラされるし,若年者の失業率は相変わらず高い状況です。いつの間にか日本は「階層社会」となり,政財界は大多数の若者を「安い労働力」としか見ていません。最初から勝負がついてるのに,どうして子どもたちが頑張れるでしょうか。三浦朱門はそういう階層社会を構想してあの答申を出したのです。
ですから問題は「世の中の三浦朱門的な流れにどう対抗していくのか」ということになるのですが,残念ながら今の僕には有効な方策は思い浮かびません。でも,世の中をそういう方向に動かそうとしているやつがいて,実際にそうなりつつあるのだ,ということを認識しておく必要はあるでしょう。鬱屈した想いを石原に託してナショナリズムに解消しようとしてはいけないのです。そんなことしたら,ますます三浦朱門の思うツボです。
■理系の給与を上げよ
僕は「文化としての科学」を楽しく勉強してもらえるようにと願って仲間と教育研究を進めているのであって,「産業界の要求」にはほとんど関心がありません。
でも,政財界の「このままでは科学技術立国ニッポンが立ち行かなくなるのではないか」という不安を解消する簡単な処方箋があるのでここに記しておきます。(過剰サービスかな?)
それは,理系エンジニアの給与を思い切り上げてやることです。文系出身者に比べて生涯賃金が5,000万円も低いことに怒り「理系はソンだ」と経済学部に進んだ優秀な生徒を何人も見てきた僕が言うんだからこれは確かなことです。(理系人生は給料が安くても楽しいんだけどね)
■ついでに教員の給与も上げよ ←それが言いたかったのか(笑)
実は同じ方法が「優秀な教員を確保する」ことにも使えます。
近年の不況のおかげで,公教育現場には優秀な人材が集まりつつあります。「勉強ができるだけの人間が教員になってもねえ」なんて声も聞こえてきそうですが,子どもに勉強を教えるのが教員の仕事です。小学生用の漢字書き取りで正答率47%の先生が免職になりましたが,やっぱりあれでは困ります。
アタマの良い子は,いろんなことをどんどん吸収して立派な教員に育つ確率が高いはずです。また,教員の持つべき資質のひとつに「想像力(共感力?)」がありますが,これは成績の高低と明らかに相関関係があります(19年間ホームルーム担任を持って800人近い生徒を見てきた上での実感)。
挫折経験の有無なんてあまり関係がありません。だいたい,生徒がぶつかる困難は千差万別ですから,教員にそのすべてを経験しておくことなど不可能です。そんなときに頼りになるのは「想像力」しかないのです。
やっぱり教員の給与を上げて,頭の良い子を呼び入れなくちゃ(^^)
・・・なんだかハナシがそれてきましたね。話がそれたついでに,
■円周率は3でよい
と思います。僕は昔からそうやって計算してきました。理系の人はだいたいそうなんじゃないでしょうか?
こんど誰かと散歩してるときに「この街路樹の幹の直径が28cm。じゃ胴回りは何cm?」ってな問題を出してみてください。
僕なら「28×3で84,まあ90cm弱ってとこかな」とします。これで十分。28×3.14とする意味がどれほどあるでしょうか。
きっちり計算しなくちゃいけない局面も(ごくたまに)ありますが,だいたいは「概算で十分」ですし,実験系の物理屋は「オーダーが合えばよし」とするのが普通です。
生徒に熱の仕事当量(4.2J/cal)を測定する実験をさせると「4.0になっちゃった。失敗だ(:_;)」などと嘆いていますから「いやいや,こんなラフな実験でそんなに良い値が出るなんてすごい」と慰めてあげなくちゃいけません(^^;)
ついでに言うと,重力加速度も10m/s^2で十分だと僕は考えています。
「自由落下すると,1秒ごとに10m/s(時速36km)ずつスピードアップする。3秒で時速100kmを超えちゃうんだねえ」
なんてね。まあ,文科省の役人がこういう理系っぽさを持ってたのかどうかは知りませんけど。