豆電球の明るさで探る「音波の定常波」
2つのスピーカーから同位相で音波を出して平面上で干渉させたとき どこで大きな音が聞こえるか,というのは高校物理の授業で必ずやる演示実験です。
上のような簡単な装置を使うと,音が大きなところで豆電球が明るく輝きますから なかなか愉快です。コンデンサマイクは,私たちの耳と同じで圧力変化(密度変化)の大きいところで大きな出力になるので耳の代わりに使えます。
上の写真の赤い線のところで音が大きくなるのですが,「あれ?この赤線は〈腹線〉じゃないの?」と思われる方も多いのではないでしょうか。
簡単のためにスピーカーを向き合わせて同位相で鳴らした時の絵を描いてみました。
スピーカーを同位相で鳴らすというのは,スピーカーのコーン紙が同じタイミングで出たり引っ込んだりするということですから,左のスピーカーAがコーン紙の前にある空気を右に押した瞬間,右にあるスピーカーBは空気を左に押します。これは,空気の変位の仕方としては「逆位相である」と言うべきではないでしょうか。「向かい合わせたスピーカーを同位相で鳴らすと,逆位相の波を作ることになる」のです。
したがって,スピーカーA,Bの中点Oでは変位の波は常に逆位相で出会うので変位波の節(密度波の腹)となって,大きな音が聞こえるのです。しかし,だからと言って点Pも変位波の節かというとそうでもありません。
スピーカーA,Bの垂直二等分線上の点Pでは,変位波の和はゼロにならないので,節ではありませんが音は大きく聞こえます。線分ABの垂直二等分線上で点Pよりもっとずーっと離れた点だと,2つの変位波の向きはほぼ一致するので,強め合って腹みたいになりますが,音は大きく聞こえます。つまり,音波が変位波だとすると,この垂直二等分線や,他の音波が強め合う双曲線は節線とも腹線とも言えないのです。
もう,音波を横波表示して変位波として扱うのはやめにしませんか? 音波はその物理的実態に合わせて〈密度波〉とか〈圧力波〉と呼ぶほうが良いと思います。話が長くなるので,詳細はこのPDF→音波は「縦波」じゃなくて「疎密波」と呼んだ方がいいのでは?を読んでみてください。
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